インナーヴィジョン

僕よりも若い世代の俳優さんに、レッスンをしていると、こちらが返って学ばされる事があります。
学ばされる…、と言うか、胸を打たれる瞬間があるのです。

まだ経験が浅く、その分、可能性に溢れた彼らが、課題に真摯に取り組んでいる姿は、感動的です。

僕は今、若すぎず、かといって熟年には程遠く、でも中堅と言うにはまだ早い、ある意味、中途半端な時期です。
たぶん僕は、これから10年がいちばん苦しい時期になるのではないかと思っています。

そんな折、僕よりも下の世代が、損得勘定なく課題に励んでいる姿を見ると、心が震えます。
自分ももっと高みを目指そうという気持ちになるのです。
彼らに悔しさや羨ましさは感じません。いつか、一緒にお芝居出来たらいいなとは思います。


演技の講師をやっていて、いちばんの特は、「観る」機会が増える事でしょうか。
人の演技を、「見る」よりも、「観る」。
それによって、人間の心理や、それに伴った動作・行動を観ることはとても勉強になります。
人は前向きな選択をするときに目線があがるのだ、
とか、
まばたきの多さは非平常の現れなのだ、
とか。


感情は、本来的に、湧いてきたら困るものなのだ、とか。
演技で、感情を湧かせよう湧かせようとして、上手くいかない事はよくあります。
情感、と、感情は、区別して考えられると思います。
感情を無理に湧かせるのではなく、“自然に”湧く為には、
情感がベースに流れている事が大切なのだと思います。
情感がある上で、話していると、心のなかに絵が浮かんできます。
それが、僕の身体の奥底から、何かを突き上げさせてくれるのです。


口で言うのは簡単ですが…、いざやるとなると難しいです。
が、目指す方向性は、そっちだと思います。





…さてさて、若者から感動を貰った事だし、ランニングに行ってこようかな。